KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 文字を大きくするだけでなく、見出しや読順の構造を整えることが重要です。
- 画像は役割に応じて説明し、複雑な図は本文や表でも情報を伝えます。
- 自動検査だけで完了とせず、読み上げ・目次移動・表示変更で確認します。
- 原稿を整える見出し・表・説明を構造化
- 読む順を確認目次・リンク・読み上げ
- 実機で点検表示変更と操作を試す
電子書籍は、文字を拡大して読む人、読み上げを使う人、小さな画面で読む人など、異なる環境の読者に届きます。紙のページをそのまま画像にして並べるだけでは、見た目を再現できても、見出しへ移動したり図の意味を音声で理解したりすることが難しくなる場合があります。
アクセシビリティを整える作業は、完成後に説明文を足すだけではありません。原稿の構造、図表の作り方、読む順序、制作後の確認までをつなげる必要があります。この記事では、編集担当者が制作チームへ渡せる確認項目を整理します。
基本点検と規格への適合を区別する
W3CのEPUB Accessibility 1.1は、EPUBのアクセシビリティと、その情報を利用者が把握できるようにするための要件を扱います。本文を読めるようにするだけでなく、関連する適合要件を確認する必要があります。この記事のチェック表だけで、規格への適合やすべての読書環境での利用を保証するものではありません。
見出し・目次・読み順が意味に沿っているか
画像の意味を説明し、色だけに情報を頼っていないか
文字サイズや端末を変えても読む順序が保たれるか
POINT見た目が整っていることだけで、読みやすいとは判断しない。
確認観点の図。自動チェックや単一端末の確認だけで適合を保証するものではありません。
最初に、文字の大きさに合わせて組み直される形式か、ページの配置を固定する形式かを確認します。絵本や複雑な図版中心の本など、固定配置が必要な場合もあります。形式の選択は見た目だけで決めず、読者が使う機能と、説明を別の形でも伝える方法を制作担当者と検討します。
見出しは文字の装飾ではなく階層として設定する
大きな太字にした文章が、必ず見出しとして認識されるわけではありません。章、節、小見出しの関係を原稿で揃え、変換後もその関係が残っているかを確認します。文書作成ソフトを使う場合も、見た目の調整と見出し設定を分けて考えます。
W3C WAIの見出しの解説は、見出しの階層が文章の構造を示すことを説明しています。電子書籍では、この考え方を章や節の整理に使い、見た目を小さくしたいという理由だけで階層を変更しないようにします。目次の並びと本文の構造が一致しているかも点検します。
見出しだけを順番に読んで、内容の流れが分かるかを試してください。「はじめに」「ポイント」「まとめ」ばかりでは、目的の情報を探しにくくなります。「比較する条件を揃える」「確認した結果を記録する」のように、節で扱う内容が分かる言葉にすると、本文へ入る前の見通しがよくなります。
画像は役割に応じて説明を決める
画像の説明は、見えている物をすべて列挙することではありません。その場で画像が伝えている意味を考えます。単なる雰囲気づくりの画像と、手順や比較結果を説明する図では、必要な扱いが異なります。図がなくても同じ情報を得られるかを確認すると、説明の不足を見つけやすくなります。
| 役割 | 説明の考え方 | 点検すること |
|---|---|---|
| 内容を伝える写真 | その節で必要な意味を短く伝える | ファイル名だけになっていないか |
| 複雑な図やグラフ | 要点と詳細を本文・表でも示す | 比較条件や数値へ到達できるか |
| 文字を画像にしたもの | 可能なら実際の文字へ置き換える | 画像を見なくても内容を読めるか |
| 装飾だけの画像 | 不要な説明を読み上げさせない | 意味のある画像を装飾扱いしていないか |
| 移動先を示す画像リンク | 画像の外見より目的を伝える | どこへ移動するか分かるか |
この表はW3C WAIの代替テキストの判断例を参考に、書籍の制作時に確認する観点を整理したものです。複雑な図の全内容を短い代替テキストへ詰め込むのではなく、近くの本文やデータ表にも情報を置きます。装飾画像の扱いは制作形式に合わせて設定してください。
たとえば三つの工程を矢印でつないだ図なら、本文に工程名と順序を記載します。色で状態を区別する表なら、「青」「赤」だけで説明せず、確認済み・未確認などの文字も添えます。図が読めない場合でも、次に取る行動が分かることを目指します。
表と箇条書きは読み上げる順序を確認する
見た目を整えるために空白や改行で列を作ると、表示幅が変わったときに対応関係が崩れる場合があります。比較表は項目名と値の関係が分かる構造にし、複雑な結合や多段の見出しが必要なら、小さな表へ分けられないかを検討します。
箇条書きも、記号を入力して並べるだけでなく、制作形式に合うリストの構造を使います。順序が重要な手順と、順不同の確認項目を区別します。KDPのアクセシビリティ案内にも、意味のある画像への説明、論理的な見出し、適切なリストなどの考え方が示されています。
表の各セルを順番に読んだとき、何の数値か理解できるかを試します。画面では上の見出しを見れば分かる内容も、読み上げの途中では手掛かりが不足することがあります。表を小さくするだけで解決しない場合は、本文で比較の要点を説明します。
目次・リンク・注から本文へ戻れるかを見る
目次から章へ移動できるだけでなく、リンク先が意図した位置かを確認します。注釈を別の場所にまとめる場合は、読む流れを失わないように戻り方も点検します。ページ数が表示設定で変わる形式では、「前のページ」「右側の図」だけに依存した説明を見直します。
リンクの文字は「こちら」だけにせず、移動先の内容が分かるようにします。外部サイトへ移る場合は、何を確認するためのリンクかを本文で伝えます。公式資料へのリンクも、公開前にリンク切れや対象ページの変更がないか確認し、参照時点を記録します。
自動検査と読者としての確認を組み合わせる
| 確認方法 | 主に見る点 | それだけでは判断できない点 |
|---|---|---|
| 構造や形式の検査 | 形式上の問題、参照先の不足 | 説明が読者に十分か |
| 目次・リンクの操作 | 移動先、順序、戻り方 | すべての機器での動作 |
| 読み上げの確認 | 読順、画像説明、表の理解 | すべての読者の使い方 |
| 表示の変更 | 文字拡大、画面幅、配色変更 | 内容そのものの正確さ |
確認記録には、使った端末やアプリ、版、設定、問題が起きた箇所を残します。「読めた」という感想だけでは再現できません。すべてを一度に試せない場合も、本文、図表の多い章、脚注、巻末など、異なる構造を含む箇所を選んで点検します。
修正後は元ファイルを直し、出力し直した版で同じ操作を再確認します。最終ファイルだけに修正を加えると、次の改訂で問題が戻ることがあります。問題の一覧に、修正箇所、担当、再確認した版を記録すると引き継ぎやすくなります。
制作担当へ渡す確認票を用意する
編集担当からは、章と節の対応、画像ごとの役割と説明、表の見出し、外部リンクの一覧を渡します。制作担当からは、採用した形式、確認した環境、未解決の制約を受け取ります。「アクセシビリティ対応済み」という一言だけでは、どこまで確認したのかが分からないためです。
たとえば図の説明を変更した場合は、本文と代替テキストの両方に反映されているかを見ます。章を移動した場合は、目次の順序と内部リンクを再確認します。修正内容から影響する確認項目を選び、前の版で確認した結果をそのまま次の版へ引き継がないようにします。
読者から問題の連絡があったときの窓口も決めておきます。利用環境と問題箇所を確認し、再現できた内容を修正記録へ追加します。個人の操作に原因があると決めつけず、制作物の構造と環境の違いを分けて調べます。
制作と紹介文の説明を一致させる
対応していない機能まで利用できるように案内しないことも重要です。制作チームから確認できた範囲を受け取り、販売先で求められる情報を正確に登録します。Kindle本の検索キーワードと紹介文を整えるときも、読者が期待する形式や利用方法と本文が一致しているかを確認します。
紙の本と電子書籍の制作の違いを踏まえ、紙面で成立した配置をそのまま持ち込むのではなく、読む環境で情報が届くかを確かめてください。最初から原稿の見出し、図の説明、表の意味を揃えておくことが、後の修正にも役立ちます。
参考資料・公式情報
制度・機能は更新されることがあります。利用時にはリンク先の最新条件をご確認ください。
- W3C:EPUB Accessibility 1.1
- W3C WAI:Headings
- W3C WAI:An alt Decision Tree
- Amazon KDP:Accessibility for eBooks
情報確認日:2026-10-24

