KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 社内にある資料でも、素材ごとの出典と利用できる範囲を確認します。
- 出典表示、ライセンス条件、個別の許諾、掲載内容の確認を分けて記録します。
- 素材IDと掲載箇所をつなぐと、改訂やWeb再利用の際に確認を引き継げます。
- 出所を特定作成者・原資料・取得日
- 条件を確認媒体・改変・表示・範囲
- 掲載を照合確認済み版と掲載箇所
企業のスライドや社内資料には、説明に役立つ図表、写真、取材の発言が集まっています。しかし、社内で使っていた資料をそのまま本やWebへ出せるとは限りません。資料全体の作成者と、その中に含まれる写真や図の作成者が異なる場合もあります。
出版前には、使いたい素材の出所と利用条件を一覧にします。この記事では、判断に必要な情報を揃えるための台帳と確認手順を紹介します。個別素材を利用できるかは契約や利用状況によって異なるため、判断が難しいものは権利者や適切な専門家へ確認してください。
資料ファイルと掲載する素材を分けて数える
最初に「営業資料Aを使う」とだけ記録せず、その中の何を掲載するかを特定します。文章、写真、イラスト、グラフ、ロゴ、画面、顧客事例など、確認する条件が異なる単位へ分けます。資料の表紙に会社名があることだけでは、含まれるすべての素材の権利関係は分かりません。
名称・URL・取得日・元ファイルを記録する
何を裏付ける資料か、更新日と一次情報を確認する
文章・写真・図表それぞれの条件を確認する
確認担当・許諾の記録・採用範囲を台帳へ残す
POINT出典が分かることと、利用できることは別々に確認する。
管理観点の図。個別の利用可否は契約・条件・必要な専門判断に基づいて確認します。
文化庁の著作権テキストは、著作物の利用にあたり権利者や利用の条件を確認する考え方を説明しています。出版作業では、その確認を後から追えるよう、掲載したい素材と根拠資料を対応させます。
社内制作の写真でも、撮影を外部へ依頼したときの契約や、撮影対象の扱いを確認する必要がある場合があります。外部から提供された素材なら、書籍、電子版、Web、広告など、予定する利用先を分けて整理します。「提供してもらった」という記録だけで利用範囲を推測しないようにします。
台帳は素材ID・出典・条件・掲載箇所をつなぐ
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 素材ID | 原稿や図表から参照できる一意の番号 |
| 内容と元ファイル | 何の写真・図・文章か、保存場所と版 |
| 出典 | 作成者、資料名、URLやページ、取得日 |
| 利用の根拠 | 自社制作の確認、契約、ライセンス、個別許諾など |
| 予定する利用 | 紙、電子、Web、広告、言語、改変の有無 |
| 条件 | 表示文、範囲、期限、禁止事項、追加確認 |
| 確認状態 | 確認中、条件付き、確認済み、使用しない |
| 掲載先 | 章、図番号、記事URL、掲載した版 |
台帳へ機密情報を広く共有する必要はありません。確認の証拠が含まれる契約書や連絡記録は、権限を設定した場所へ保管し、台帳から参照できるようにします。制作担当が知るべき利用条件と、限定した担当者だけが見る記録を分けることもできます。
素材IDは、ファイル名が変わっても追えるようにします。たとえば図の描き直しやトリミングが発生したら、元の素材IDと加工した版を関連付けます。図をきれいに描き直しただけで、元の出所や確認が不要になるとは限りません。
出典表示と利用できる根拠を混同しない
出典を記載することと、利用が認められていることは別の確認です。引用として扱うのか、ライセンスに従うのか、個別の許諾を得るのかなど、利用の根拠を整理します。「出典を書けば自由に使える」「一部分なら常に問題ない」といった一律の判断は避けてください。
文化庁のテキストでは、引用には公表された著作物であること、公正な慣行に合うこと、目的上の正当な範囲であることなどの条件が説明されています。ここでは個別の引用の可否を判定せず、引用したい箇所、目的、分量、本文との関係、出所を確認担当へ渡すために記録します。
引用する文章は、原資料の版やページと照合します。二次資料で見かけた文章を、元の資料で確認したかのように出典表示しないことも大切です。原資料へ到達できない場合は、その状態を記録し、掲載方法を再検討します。
ライセンスは名称だけでなく条件を保存する
素材サイトや公開データの利用条件は、素材や契約によって異なります。「無料素材」「オープンな画像」という呼び方だけで判断せず、適用されるライセンスと対象素材を記録します。確認したページ、取得日、必要な表示、改変や再配布に関する条件を残します。
たとえばCC BY 4.0の案内には、クレジット、ライセンスへのリンク、変更の明示などの条件が示されています。また、他の権利に関する確認が別に必要になる場合があることも説明されています。CCの表示がある素材をすべて同じ条件として扱わず、具体的な種類と版を確認してください。
台帳には掲載するクレジット文も用意します。本文や巻末の表示を制作担当がその場で考えるより、確認済みの文を渡す方が取り違えを防ぎやすくなります。図版を差し替えた場合は、古い出典表示だけが残っていないかも確認します。
写真・画面・顧客事例は内容の公開確認も分ける
素材自体の利用条件が整理できても、写っている人物、顧客名、画面内の情報、未公開の案件内容などの確認が残る場合があります。著作権に関する確認だけで、掲載内容のすべてが確認済みになるわけではありません。誰が内容の公開範囲を確認するのかを決めます。
| 素材 | 確認の観点 | 台帳へ残すもの |
|---|---|---|
| 人物写真 | 用途、氏名表示、掲載する範囲 | 確認した版と対象用途 |
| 操作画面 | アカウント情報、個人情報、利用条件 | 加工箇所と確認日 |
| 顧客事例 | 社名、数値、発言、公開可能な範囲 | 確認者と掲載原稿の版 |
| 社内データ | 集計条件、機密性、公開判断 | 元データと確認した条件 |
画面の一部を隠した場合も、他の表示や前後の説明から情報が分からないかを確認します。単に名前だけを消すことを完了条件にせず、公開する画像全体を見ます。不要な情報を最初から写さない方法も検討してください。
グラフの元データと作図した図を別々に記録する
公開データを基に自社でグラフを作る場合は、元データの出典と、どのように集計・作図したかを分けて記録します。掲載した図の見た目が自社のものでも、データの利用条件や表示事項の確認は残るためです。元の表、対象期間、抽出した列、計算方法を追えるようにします。
数字を丸めたり一部の項目を除いたりした場合は、その処理も残します。利用条件の確認と、図の説明が正確かという確認は別の作業です。凡例、軸、単位、比較範囲を照合し、元データが示していない因果関係を図の題名で断定しないようにします。
この記録があれば、翌年のデータへ差し替える際にも同じ条件で更新しやすくなります。新しいデータの利用条件が以前と同じかも確認し、取得した日と更新した掲載版を台帳へ追加します。
確認状態を工程ごとに引き継ぐ
確認中の素材は、原稿やデザイン上でも状態が分かるようにします。仮の図版が、そのまま完成品へ残ることを防ぐためです。使用しないと決めた素材は候補から外し、差し替え先と、本文の参照が変わる箇所を記録します。
条件付きで利用する素材では、その条件が完成した版に反映されているかを最後に照合します。必要なクレジット、掲載範囲、加工の有無などを確認し、台帳の状態を更新します。連絡先から返事がないことを、許諾が得られたことに置き換えないようにします。
企業出版の準備と制作範囲を整理する段階で、素材の確認と照会を誰が担当するかも決めてください。編集やデザインを外部へ依頼しても、社内にしか分からない事例の公開条件まで自動的に確認されるわけではありません。
改訂・電子化・Web展開のたびに利用先を照合する
紙の本で確認した素材を、電子版やWeb記事へ使う場合は、予定する利用が確認済みの範囲に含まれるかを照合します。別の版、別の言語、広告への使用など、利用先が変わったときの確認を台帳で追えるようにしておきます。
KDPのコンテンツガイドラインでも、出版する内容に必要な権利を有することが求められています。入稿できたことや審査を通過したことだけを、自分の権利確認の代わりにしないことが大切です。利用する販売先の現行条件も確認してください。
出版後のコンテンツ活用を進める際は、素材IDから利用中の記事や図表を探せるようにします。条件の変更や訂正が必要になったとき、掲載先を一つずつ思い出す作業を避けられます。台帳は法的判断を代行するものではなく、判断に必要な情報と対応履歴を失わないための道具です。
参考資料・公式情報
制度・機能は更新されることがあります。利用時にはリンク先の最新条件をご確認ください。
情報確認日:2026-10-24

